日本好色藏票史
本文のところどころに 空白地帯を残し、 未完のまま届けられた本。 本書は、装幀家の内藤政勝がお膳立てし、自ら造本して個人出版社「青園荘」から刊行した非売品。筆を執ったのは、本書に先じて『蔵書票の話』や『日本の古蔵票』を上梓していた斎藤昌三。テーマとしたのは、日本の好色蔵書史。 はたして、ページをめくると、それほどエロチックではない。昭和22年の本であるから、この辺りがギリギリの線だったのかもしれない。ただ、子安貝や暖簾を図案化した蔵票デザインなどは、むしろおおいに洒落ていて、小さなプロマイドのような世界に、鈴木春信風や山東京伝風の、エクスリブリス(Ex Libris)も多数登場する。なんといっても装幀がすばらしい。 この本が面白いのは、図案デザインの希少な資料という点だけではない。じつはこの本は、完成しないまま届けられたのだった。 本文をよく見ると、文字組みのあいだに別刷りの図版を貼り込んでいる。内藤は、これを売らないのに250部も手製本することにした。ちょっと狂っている。ただし、時間の見積もりは苦手だったのか、案の定、図版の貼り込みが間に合わなかった。それで、勢い「後で届けます」というお詫び状を挟み込み、貼られるべき箇所を空白にしたまま、刊行した。 本書は、間に合わなかったことのお詫び文と、後になって届けられた「未綴じのエクスリブリス」が付属した完品ということになる。発売を遅らせる、という選択肢はなかったのか、いまとなっては分からないが、ここには、空白の地帯と、事の顛末を想像するたのしみが残されている。 Text by 櫛田理
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- Default Title — 88000.00 JPY — Out of stock
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