各国の代表アーティストが揃う<br>ヴェネチア・ビエンナーレ
日本各地でも開催されている国際的な芸術祭。本連載のVol.1でご紹介したので、実際に訪れた方もいるかもしれません。2026年は、世界で最も有名な芸術祭の一つ「ヴェネチア・ビエンナーレ」が開催されます。そのため、この機会にPatras読者の皆さんにも、世界のアートや芸術祭に興味を持ってほしい、そして、アーティストを応援したり、実際にヴェネチアを訪れてアートを堪能してほしいと思っています。実際に現地で体験すると、写真や言葉だけでは伝わらないスケールや熱量に触れることができるはずです。そこで今回は、ヴェネチア・ビエンナーレについて墨屋宏明氏にお伺いし、2026年の注目ポイントも教えていただきました。 ヴェネチアの風景。運河越しにサン・シメオーネ・ピッコロ教会を望む。 2年に1回イタリア・ヴェネチアで開催 約130年の歴史を誇る国際的なアートの祭典 世界中から最先端のアートが集結する祭典、芸術祭。信頼あるディレクターやキュレーターがテーマを設定し、いまの時代に何を提示するべきかを強く意識しながら、注目の若手から歴史に残る物故作家までもから選定し、作品を再構成(キュレーション)することで、美術の社会的な側面や、歴史的意義を問いかける展覧会です。 最近、市民権を得てきた「アートフェア」(本連載Vol.3もぜひご参照ください)と混同する人もいるようですが、アートフェアは作品を購入する場所であり、各ギャラリーが推すアーティストの作品が並ぶマーケット主導の場です。いわば「思想を観る場」である芸術祭とは、大きく性質が異なります。 本連載Vol.1でも名前を出しましたが、国際的によく知られている芸術祭の一つが、イタリアのヴェネチアで開催される「ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」。第1回は1895年という約130年の歴史を誇り、毎回、そのときどきのアートの最前線を目撃できるとあって、世界中のアーティスト、アート関係者、批評家、アートファンが関心を寄せる芸術祭です。 Patrasではこの美術展を取り上げますが、ヴェネチアでは他にも建築、映画、音楽、演劇の各祭典があります。開催年はそれぞれで決まっており、2年に1回の開催で、第61回の美術展は2026年5月9日から11月22日までです。 総合ディレクターが世界中からアーティストを選定する ストーリー性のある「アルセナーレ」 ヴェネチア・ビエンナーレのメインとなる会場は、「アルセナーレ」と「ジャルディーニ」の2つあり、異なるコンセプトで実施されます。 アルセナーレは、ヴェネチア共和国時代の国立造船所だった場所が会場。1人の総合ディレクターがテーマを決め、世界各国からアーティストを選定して、ストーリーのある展示を創出します。大規模な空間の中で展開される展示は、単なる作品の集合というよりも、キュレーターが描いた物語の中を歩いていくような体験に近いものがあります。ギャラリーやアートフェアでは出合わないような巨大なインスタレーションが多く、現代アートの醍醐味を体感できる場です。 第61回の総合ディレクターには、カメルーン出身のコヨ・クオ氏が初の黒人女性として就任しました。テーマは「In Minor Keys」。クオ氏は就任後に急逝されましたが、生前に編成したチームが構想を引き継ぎ、そのビジョンを実現する形で開催されます。 公園内に建つ各国のパビリオンで 代表アーティストが作品を展示する「ジャルディーニ」 もう1つの会場であるジャルディーニは、ヴェネチア東部のカステッロ公園が会場。緑あふれる広い園内には、フランス、アメリカ、イギリス、ロシアなど各国のパビリオンが建っていて、万博のような雰囲気があります。万博と違い、建物は恒久的なもので、それぞれの国の特徴が建築や展示に色濃く表れている点も魅力です。日本館は1952年に建てる権利を得て、吉阪隆正氏の設計により1956年に建設されました。 ここで、各国が独自に選出したアーティストの個展やグループ展を行います。国を代表して精鋭アーティストが作品を披露するので、オリンピックのような側面もあるかもしれません。 第61回の日本館では、日系アメリカ人でクィアのアーティスト、荒川ナッシュ医氏の個展が開催されます。テーマは「草の赤ちゃん、月の赤ちゃん」。ちょうど選出される少し前に双子を授かった荒川氏は、自身が育児を通して感じたことなどに喚起され、多くの赤ちゃん人形を展示するインスタレーションが展開されます。キュレーターは高橋瑞木氏と堀川理沙氏が共同で務めます。世界各国のアーティストとキュレーターが発表する展覧会の中で、日本館がどのように注目され評価されるのかとても注目したいところです。 街中の小運河や路地の風景 アーティストを応援することにより これからの飛躍を後押しできる アーティストにとって、ヴェネチア・ビエンナーレでの発表は、世界中のアートサーキットに存在を知られる大きな機会となります。歴代の出展アーティストの中に名を連ねることは、キャリアにおいても重要な転機になるといえるでしょう。 そのため、応援しているアーティストがこの舞台に立つことは、コレクターにとっても特別な意味を持ちます。作品を所有することに加え、その成長のプロセスに関わることができる点も、現代アートならではの魅力です。 今回、日本館に出展する荒川氏については、応援できるクラウドファンディング・プロジェクトが立ち上がっていました。中には、展示した赤ちゃん人形を展覧会後に受け取れるというコースもあり、支援した価格以上に、時間の経過とともにその価値が大きく意義あるものに変化していく可能性もあります。 作品を手にするだけでなく、アーティストのキャリアの節目に立ち会うこと。コレクションの醍醐味は、まさにそうした瞬間にあるのではないでしょうか。 La Biennale di Venezia https://www.labiennale.org/en 2年に1回開催される「ヴェネチア・ビエンナーレ」。期間中は、本会場以外にもアートに触れられるプログラムがたくさんあり、街中でアートを堪能できます。Patras platinum(有料会員サイト)では、2026年5月5日からゲリラ的にプロジェクトを開催する日本人アーティストのシュウゾウ・アヅチ・ガリバー氏と、同氏の作品をご紹介しています。あわせてお楽しみください。。
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