山梨県の<br>「清春芸術村・Kiyoharu Art Colony」で<br>風景、建築、アートを楽しむ

山梨県の<br>「清春芸術村・Kiyoharu Art Colony」で<br>風景、建築、アートを楽しむ

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よく訪れるお気に入りの美術館はありますか? 少し足を伸ばして遠くの美術館へ行くことはあるでしょうか。美術館とひと言で言ってもさまざまで、展示空間や収蔵している作品、規模、立地などにより特徴が異なります。今回ご紹介するのは、墨屋宏明氏が2025年よりディレクターを務めている山梨県北杜市の「清春芸術村 Kiyoharu Art Colony」。美しい自然に囲まれた開放的な敷地に名建築がいくつも建つ、ユニークなアートコロニーです。この施設についてお伺いするとともに、都市にある美術館とはまた違った地方の美術館が持つ魅力についても、あわせて教えていただきました。   標高約750mに位置する清春芸術村。雄大な風景と新鮮な空気を味わいながら建築とアートを楽しめる。左手前の建物は「ラ・リューシュ」 周囲の環境も含めて非日常を体験できる わざわざ訪れたい自然の中の美術館 人気のある美術館は地方にも数多くありますが、そういう美術館について考えてみると、来館者を惹きつけているのは、必ずしも作品だけではないように思います。たとえば、周りの環境や土地が持つ歴史、そこにしかない空気感……。都市の喧騒から離れて、時間がゆったり流れているような非日常の場に身を置くこと自体が、貴重な体験になっているのです。 また、自然豊かな環境にある美術館は、スペースに制約が多い都市部の美術館とは異なり、建物や空間を堪能するという行為も大きな意味を持ちます。その建物がどんな時代に、どんな背景で、どんな風景の中に建てられたのか。さらに、パブリックアートを含めて、どのような作品がコレクションされ、展示されているのか。 そういったさまざまな要素が包含されたアート体験ができるところに、たとえ遠くであっても、わざわざ足を運ぶ理由があるのではないでしょうか。 桜の名所でもある小学校跡地で 著名な建築家の作品が観られる「清春芸術村」 南アルプスや八ヶ岳、富士山が望める自然豊かな山梨県北杜市にある、芸術文化施設「清春芸術村」。ここは、1975年に廃校となった清春小学校の跡地から始まりました。かつてまだ小学校だった1925年にこどもたちが植樹した桜が現存し、約100年を経てなお美しく咲き誇る桜の名所としても愛されています。 緑の芝生が広がる開放的な敷地内には、異なる建築家が手掛けた建物が点在しています。「ラ・リューシュ」は、パリに現存するエッフェル塔を設計したギュスターヴ・エッフェル氏によるアトリエ兼集合住宅を再現したものです。他にも、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の設計でも知られる谷口吉生氏による「清春白樺美術館」や、滞在するアーティストが瞑想するためにつくられた「ルオー礼拝堂」、自然光だけの空間で作品を鑑賞できる安藤忠雄氏設計の「光の美術館」、建築史家の藤森昭信氏設計による桜の花の高さに浮かぶ「茶室 徹」などがあります。 こうした建築と自然が溶け込んでいる環境の中で時間を過ごすこと自体が、清春芸術村ならではの体験になっています。また、国内外のアーティストがこの環境で暮らしながら、新たな作品や活動を生み出してきたことも、清春芸術村の大きな特徴です。実際、ここを何度も訪れる方たちは、アートだけにとどまらない魅力を満喫してくれているように感じます。 (左)ロダンや志賀直哉ら白樺派に縁のある作品が展示されている清春白樺美術館/谷口吉生 (右)人工照明を一切使っていない光の美術館/安藤忠雄 時代の流れとともにコレクションが進化する プライベートミュージアム 清春芸術村は「プライベートミュージアム」であることも注目すべきポイントでしょう。 その面白さは、時代ごとに財団の思想が継承されながら更新されていくことにあります。日本が西洋文化に強く影響を受けていた1980年代にはモンパルナスの「ラ・リューシュ」が再現され、その後、白樺派の活動を紹介するために谷口吉生氏の「清春白樺美術館」や「ルオー礼拝堂」が建てられました。2011年には安藤忠雄氏のコンクリート打ちっ放しの現代的な建築が加わりました。2019年には新素材研究所(杉本博司+榊田倫之)による数寄屋住宅と庭を現代の技術で表現した「和心」、最近では内田奈緒氏や秋吉浩気氏といった次世代の建築家の「こどものための建築」プロジェクトが進められ、2026年夏には建築家・伊東豊雄氏の“内なる自然”をコンセプトにした建築作品「こどもの遊び場」が完成予定です。年月の経過とともに社会や環境が変化するのにあわせ、ここにある建築の思想もそれに呼応しながら建てられているのです。 これはアートコレクションの育て方にも似ています。最初に買って終わりではなく、時代の流れとともに少しずつ作品を積み重ねていくのです。 社会も自分も成長していけば、新しいものが生まれていくはずで、そこに代謝がある。プライベートミュージアムならではのコレクションの進化は、公立の美術館とはまた違った価値になっていると思います。 美術館は作品を鑑賞する場所であると同時に、その土地の風景や建築、そしてアーティストたちの創造と出会う場所でもあります。作品だけでなく、その背景にある自然や建築、人の営みも含めて味わうことで、その場所ならではの豊かな体験になるのではないでしょうか。 清春芸術村 Kiyoharu Art Colony 山梨県北杜市長坂町中丸2072 開館時間:10:00~17:00 (入館は16:30まで) 休館日:年末年始、月曜 (祝日の場合は翌平日) 入館料:一般1500円 大・高校生1000円 小・中学生 無料 https://www.kiyoharu-art.com/ 「清春芸術村」にある建築やアートは、それぞれに独自のストーリーがあります。Patras platinum(有料会員サイト)では、ディレクターを務める墨屋宏明氏に、芸術村や美術館創設の背景など、より詳しい話を伺い、ここにある名建築も案内していただいています。すでに訪れたことがある方も、これから訪れたいと思っている方も、ぜひあわせてご確認ください。

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